漬かるほどに味わい深く・・・金婚漬
重なり合う味、食感
金婚漬
「金婚漬」は縁起のいい名前の漬物です。あめ色をしたウリの中に、ニンジンやコンブ巻きがぎゅっと詰まっており、輪切りにすると渋めの色合いの中にニンジンが鮮やかな顔をのぞかせています。
漬物床の中で熟成させ、時が経てば経つほどにいい味が出てくることから夫婦になぞらえて「金婚」漬。あるいはその形が、岩手県の陸中海岸のナマコ(キンコと呼ばれる)に似ていることでこの名がついたと言われています。「よく漬かればおいしい」というだけに、数年樽に漬けることも珍しくなく、しょっぱくするのがいかにも東北の漬物らしい。
食べるときには、輪切りのほか、刻んでお茶漬けやおにぎりの具としても重宝します。もとは農家の保存食だったもので、いつごろを起源とするか明らかな資料はありませんが、江戸時代の終わり頃から作られているものといわれています。
コンブを使うのが独特
昔はどこの農家でもみそを手作りしていました。みその発酵を促すために、ダイコンやキュウリといった野菜を入れることも多く、金婚漬はその延長で生まれたものであろうとされています。
金婚漬のように詰め物をした漬物は、関東や関西、なかでも伊賀(三重)地方などでは「鉄砲漬」と呼ばれています。金婚漬はその製法と似ていますが、コンブを使うのが特徴です。名前の由来といい、海ともつながりの深いことがうかがえます。
金婚漬に使う漬けウリ(カリモリウリなど)は、岩手県では花巻市や江刺地方で七月ごろ栽培されており、現在は契約栽培が圧倒的に多くなっています。
伝統ある味を引き継ぐ
いまや岩手を代表する漬物というほどになった金婚漬ですが、花巻などでは戦後商品化が進み、家庭で作られるというよりも、老舗漬物店による商品が食卓に出回るようになりました。中には、みそ・しょうゆの製造元が作った例もあります。これらの商品は、減塩志向に合わせて塩分控えめの味にするなど、試行錯誤してより多くの人に受け入れられるよう、工夫されています。
1963年から金婚漬を製造販売している株式会社道奥では、熟練の腕でその伝統の味を守っています。また、金婚漬を知ってもらおうと、道奥と花巻観光協会で金婚漬の製法を伝える体験実習を行い、観光客の皆様にもご好評いただいています。
一般的な金婚漬の作り方
①ウリ、ニンジン、ゴボウ、シソの葉を準備する。
②ウリのわたを抜き、水洗いをして下漬けをする。このとき塩はウリの重量の20%程度が目安。漬かったら塩抜きをする。
③(もろみしょうゆに)漬けたニンジンとゴボウを縦に細かく切り、シソとコンブできつく巻く。
④ウリの穴の中に③を詰める。きっちり詰めるのがコツ。
⑤味噌に漬ける。薄味なら1ヵ月、がっちり漬けるならば半年~1年以上。(上記は株式会社道奥の製造法とは異なります)